イギリスで読まれる日本の雑誌


今日は前回に引き続いてロンドンからのレポートを皆様にお届けします。
題して「イギリスで読まれる日本の雑誌」、充実のエッセーです。
書いてくださったのはロンドン日本文化センター図書館職員
(Resource Centre Officer)のY.O.さんです。


さっそくどうぞ (。^_^)ノ☆・゚::゚ドウゾッ♪

「エクスキューズミー。キミの読んでいる文字は何なんだ?」


またか、と上から下に文字を追うのを止め、顔を上げる。


「これはね、ジャパニーズ」


カラフルな写真がたくさん載った日本の雑誌、単行本やマンガ…。
小さい頃から本の虫だった私は、イギリスでも、暇を見つけては
活字の世界に没頭するのがいつもの習慣。ロンドンの地下鉄で、
おもむろに本を取り出し、ページを開いた途端に感じる周りの
視線は、時に、自分が芸能人になったかのような錯覚(妄想?)
をもたらすことさえあります。


イギリスで雑誌といえば、左から右へ読むもの、ページは左側へ
めくるもの。一般的な日本の雑誌とは、表裏からして違います。
右から左へ目を移し、ページを右側に繰る姿は、現地の人から
すれば不思議に思えるのでしょう。しかも、よくよく見れば、
文字が上下に並んでいたりもするわけです。実際、私は、
「どの方向に文を読んでいるの?」、「どうして後ろから雑誌を
読むの?」と真顔で尋ねられたことも一度ではありません。


私の職場である国際交流基金ロンドン日本語ランゲージセンター図書館は、
多民族都市ロンドンという土地柄、来訪者の国籍も、英国や
ヨーロッパを始め、中国、ウズベキスタン、エジプトなど、
バラエティーに富んでいます。蔵書が日本語教育
に特化しているということもあって、館内で冒頭のような質問を
受けることは、ほとんど皆無。配架している雑誌も『月刊言語
や『日本語学』など、日本語を母国語としない方にはとっては、
まず縁がなさそうなものばかりです。そんな中、敢えて来館者に
人気の雑誌を三つ挙げるとするならば、『Japan Close-Up』、
Nipponia*1、そして『Hiragana Times』。これらはどれも
英文が載っているので、日本語の知識がなくても手に取りやすい
のかもしれません。『Nipponia』は、写真も豊富なので、授業で
日本文化を紹介する際の教材として、日本語を教えている先生方
にもよく利用されているようです。


月刊言語

月刊 言語 2009年 03月号 [雑誌]

月刊 言語 2009年 03月号 [雑誌]


Hiragana Times


図書館の利用者で、大学で日本語を勉強しているイタリア人の
Aさんに話を聞いてみました。


「『Japan Close-Up』は、大学の図書館にもあるので
よく読みます。写真も多いし、今、日本で何が流行っているのか
とか、良い夫とはどういう夫だと思うか、といった日本人への
アンケート記事が載っていて、とても面白いです。


もともと私が日本に興味を持ったきっかけは『風の谷の
ナウシカ』などのアニメでした。宮崎駿の作品を見て、
その中で訴えかける哲学的なメッセージに興味を引かれ
たのです。それまでは、日本のイメージというと、東京、
お寺、寿司といったものでしたが、日本語を勉強し始め
てから、現代的な文化と伝統的な文化がミックス
していてとても面白い国だと思うようになりました。
イタリアは芸術が身近に溢れているので、日本の文化や
芸術にも自然に興味を引かれるのかもしれません。
禅庭や現代の日本に興味があるので、日本の若い人の
ファッションや考え方を特集した雑誌があれば、
もっと読んでみたいです。」


イギリスの中でも、特にロンドンは、日本食レストランや日本
食料品店も多く、日本の書籍を扱っている店もいくつかあります。
そうした書店の一つにも話を聞いてみました。



「日本人以外のお客さんに人気のある雑誌といえば『ViVi』
Seventeen』、『明星』といったものですね。
『Hiragana Times』や『家庭画報インターナショナル』を手に
される方もいらっしゃいますが、全体的に、写真が多く載った
日本のファッション系雑誌を見ていかれる方が多いです。」


ViVi

ViVi (ヴィヴィ) 2009年 04月号 [雑誌]

ViVi (ヴィヴィ) 2009年 04月号 [雑誌]


Seventeen

SEVENTEEN (セブンティーン) 2009年 04月号 [雑誌]

SEVENTEEN (セブンティーン) 2009年 04月号 [雑誌]


家庭画報インターナショナル



イギリスのテレビのデジタルチャンネルには、未だに、
風雲!たけし城*2といった日本の昔のテレビ番組を放映している
ところもありますが、最近は、インターネットの動画で日本の
新しいドラマや歌のクリップなどを見ている人が多いようです。
先日、図書館で、来館者に日本の言葉を知っていると得意気に
話しかけられたので尋ねたところ、


センパイ!


という答えが返ってきました。「千杯…?」と、一瞬、
何のことか分かりませんでしたが、ドラマでよく使っていた
といわれ、「先輩」のことだと思い当たりました。


私はイギリスに住んで10年以上になり、最近の日本の芸能人や
謡曲にもすっかり疎くなってしまいました。もしかしたら、
ロンドンの地下鉄で、『明星』を読む英国人に、日本の芸能人の
名前を聞く羽目になるなんていうことも、そう遠い話ではない
のかもしれません。

*1:『Nipponia』も季刊雑誌でした。

*2:前回「家にテレビはありません(し、見ません)」と書いたのですが、先日、出張先のホテルで夜、何気なくテレビをつけたら『めちゃイケ』をやっていました(小栗旬くんの回)。僕はテレビを捨てる際、『めちゃイケ』を見れなくなることだけが心残りだったくらいファンなのです。で、番組は相変わらずすごくおもしろかったのですが、ふと画面を見ると「岡村隆史(38)」とテロップが…。岡村さん、もう38歳なんですね。時の流れを感じました。−久保田