ステレオタイプを乗り越えろ!


ベトナム出張から戻りました久保田です*1


先日の記事でもとりあげたTBSラジオ・ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル。所用で13日(土)の放送を聴くことができなかったのですが、番組ホームページを見たら、なんと「シネマランキング2008」でシークレット・サンシャインが1位になっているじゃないですか!


そもそも番組で宇多丸さんが激賞しているのを聴いてから観にいっているわけで、結果として先日の記事に書いた「2008映画 個人的ベスト5」でプッシュしたシークレット・サンシャインが1位になったからといってどうってこともないといえばどうってことないのですが…。


まあともかく、本当にいい作品なんで*2、しつこくリマインドします。シークレット・サンシャインは、http://www.h4.dion.ne.jp/~wsdsck/contents/program.html12月19日(金)まで高田馬場の早稲田松竹でリバイバル上映中です。もしご興味のある方はぜひ足をお運びください。


宇多丸さんつながりでもう1つすごく良かったのが、11月29日放送分の読書特集でおススメ本として挙げられていたこの本。出張中に読みました。


「集団主義」という錯覚―日本人論の思い違いとその由来

「集団主義」という錯覚―日本人論の思い違いとその由来


読みながら、我らが小川忠さんへのインタビュー(Part2)で小川さん*3がこんなことをおっしゃっていたことを思い出しました。

国際交流を通じて相互理解を深めていくという行為は、人の「先入観」とか「偏見」をひっくり返す、ということだと思います。国際交流の世界で25年働いてきて、経験則的にいえるのは、人は誰でも、無自覚のうちに偏見や先入観を持っていて、これを満たしてくれるものを書いたほうが喜ばれたりする。安心できるんでしょうね。その思いを満たしてくれないものは失望されることも多いのです。


自分もしばしば乱暴な議論をしてしまうことがあって、僕もずっと「どうして人は先入観や偏見を持ってしまうのだろう? 無知や経験不足や「目の前にある事実だけが絶対とは限らない(=だから言説でも何でも一旦は疑え)」といった警句だけで片付けられない原因があるのだろうか?」と思っていました。本書は、日本人=集団主義、欧米人=個人主義という強固な通説との相対し方をとおして、様々な知慧を提供してくれます。誰が読んでも収穫が多い著作であることは間違いありませんが、文化交流に興味がある方にとってはとりわけ必読の書だと思いました。


この本は「偏見」に由来する思いを満たしてくれる本ではありません。厳密な思考から導き出されたしっかりとした裏づけで読者を説得してくれる誠実さに満ちた本だと思います。みなさま、ぜひご一読ください!*4

*1:まだ報告書が書けてません(泣) 出張中の出来事についてはまたこのブログでも書きたいと思います。

*2:この映画と通底しているなと感じたのがE.レヴィナス『困難な自由』でした(例えばそのなかの1篇「神よりもトーラーを愛す」)。同書は内田樹先生の新訳で国文社から出ています。

*3:小川さんはジャパンファウンデーションの日本研究・知的交流部長兼日米センター事務局長です。JFサポーターズクラブにスタッフ紹介が掲載されています。

*4:毎日新聞紙上で沼野充義先生も書評されています。