第10回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展


こんにちは、松岡です。

今日はジャパンファウンデーション本部の国際会議場で、「第10回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展」の記者発表がありました。

今回の総合テーマは"Meta-Cities"、それに対して日本館のテーマは


"藤森建築と路上観察 ―シュールリアリズム建築と都市の無意識― "


です。



今回の日本館のコンセプトに関して、コミッショナーを務める藤森照信さんは次のように語ってました。

日本の多くの建築家というのは既に海外でも知られていて、その点で「日本の現代美術家を海外に紹介する」というのと同じように、日本の建築家を海外に紹介するというのはあまり必要性を感じない。
また過去2回くらいは、直接、建築をやってこなかった。
そろそろ直接、建築をやりたいという流れと、かつまだ世界で知られていない日本の建築、ということで私が選ばれたのでしょう。



展示の内容は、

1.建築のシュールリアリズム
 1−1 藤森建築
 1−2 日本と世界の例
2.都市の無意識を探る―路上観察
 2−1 日本の例
 2−2 ヴェネチア・パリ・ロンドン・上海・ハノイ


記者発表の前半では、藤森さんの自作紹介がありました。藤森さん自身は、自分で自作を評することは避けたいといいながら*1、他人からの評として「バナキュラーでありながらインターナショナルである」点を、藤森建築の特徴として挙げてました。

自然素材を露出させたり、昔の工法を用いたりすることで、触ってみたい、細部を見てみたいという衝動を見る人に与える、それが藤森建築なのかもしれません。

屋根にニラ(食べる「韮」です)が生えている「ニラハウス」とか(まさにシュール!)、家のスケールに対して人間がかなり大きいマンガのような茶室であったり、なんともいえない「間」を感じるスライドでした。


一方、今回の展示には藤森さんを含む「路上観察学会」の面々も参加します。記者発表にも赤瀬川原平さん、南伸坊さん、松田哲夫さん、林丈ニさんらが参加されました。


松田さんは、

まだ日本でバブルが始まろうとする頃、まちが壊されて造りかえられていこうとするタイミングで、ちゃんとまちを見ておかないと、といったなんとなくの思いで集まったのが「路上観察学会

と語ってました。


路上観察」とは、まちを歩きながら「都市の無意識*2」を写真で切り取る作業です。
今回の記者発表ではそうした作品を(「入り口の無い階段」とか「ツタの巻きついた自転車」とか)次々とスライドで見せながら、時折会場の笑いも誘いつつ最後は「路上観察学会」の会合と化すほど盛り上がりました。

路上観察が生み出した、「はっ」とする気づきと藤森さんの「何にも似ていない」建築と、これらがどのように組み合わさってヴェネチアを沸かすのか、今から非常に楽しみです。


最後に藤森さん、「金獅子賞は狙ってますか?」というという問いに対して、「えっ、あの賞ってそんな凄い賞なの??」と逆質問してました(笑)。
というのも、過去に日本館に出品した多くの建築家がもらっている*3ので、みんなもらえるものかとおもったとのこと。

まあ賞の話しは置いといても、今回のヴェネチア・ビエンナーレ建築展の日本館は、昨年の「OTAKU」につづいてまたもや新しい「日本の感覚」を提示してくれるかもしれません。

*1:会見後に「自作を説明するのか?」という質問がありましたが、歴史家としてこれまで色々な建築家を見てきたが、自分で自作を語ることで消えていってしまった作家を何名か見てきた。そういうこともあって、語ることはしないでしょう、とのことでした。

*2:藤森さんは「普段は何気なくやり過ごしている、気づかない、変なもの」と言ってました。

*3:昨年の第9回はSANAAの「金沢21世紀美術館」が作品賞を受賞していたり、第8回は伊藤豊雄さんが功労賞を、第6回はパビリオン賞をもらってるんです。ちなみにこの第6回にもらったものは、うちの役員室に飾ってあります!